2015年11月24日火曜日

強迫性障害の恐ろしさ


先日、新聞に「生活に支障来す強迫症」という大きな記事が載っていました。

10年ほど前に強迫性障害を経験し、日常生活を送るのが大変だった時期があったので、そのあたりを書いてみたいと思います。


私は強迫性障害の中でも「確認行為」というものが止められず、戸締まりやガス栓を何度も確認してしまうので家を出るのにものすごく時間かかり、しまいに家から出られなくなるという状態に陥りました。

強迫性障害と聞くと私が体験した戸締まりなどを確認する「確認行為」や、汚れる事へ強い不安を感じて手洗いがやめられなかったりする「不潔恐怖」など思い浮かびますが、それ以外にも誰かに危害を与えてしまわないかと言うものや、数や色などにとらわれてしまうものなど様々なものがあります。

厚生労働省 こころの病気を知る 強迫性障害
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_compel.html

あくまで私の経験談なので個人差があると思いますが、私の確認行為は1年くらいは続いたと思います(どこまでを症状としての確認行為とするのかにもよると思いますが)

ただその間に生活は荒み、自分自身がどうしてこんな事にとらわれてしまうのかと責めてしまい、精神的にとても不安定でした。心穏やかに暮らすという事がいかに大切だと言うのを強く感じました。

この強迫性障害を発症する数年前からうつ病で苦しみ、一日中寝てばかりの日が続いていました。そんな中で災害に遭い、決まった日までに生活しているマンションを引っ越さなければいけなくなってしまいました。うつ病で苦しく体も思考も思うように働かないまま、荷物をまとめたり引越しのための様々な手続きをしてなければならず、精神的にさらに負荷がかかってしまいました。

心身ともに健康な状態でも引越しは大変負荷がかかる作業なのに、鬱々としている時にそんな事をしなくてはいけなくなり、引越し日ギリギリまで泣きそうになりながら準備をしていました。

そして新しい所に無事引越しが終わった時から、戸締まりなどが酷く気になるようになりました。それは災害で失った終の棲家が心に引っかかっていたからなのでしょうか、私の強迫性障害の生活が始まりました。

最初は玄関の鍵を何度か確認する程度だったのですが、それが日に日に回数が増えていき、またドアノブを回してドアを引き、鍵の手ごたえを確認する。それを左に回して5回、右に回して5回といったように、段々と自分の中でこの手順でこの回数を確認しないと終わらないようになってきます。

その途中で例えば同じ階の人が出てきたりすると、何回も確認している姿を見られたくないので部屋の中に戻ってしまいます。そうするとまた最初からやり直しをしないと気が済まなくなります。そしてその邪魔をされた事に腹立たしくなります。勿論それでその人を責めたりはしないのですが、もしもっとフラストレーションが溜まっていたら「邪魔をするな!」と怒鳴ったりしていたのかもしれません。

あまりにドアの鍵が気になり、仕事に行く途中でまた家に戻ったりする事も増えてきたので、さすがにこれでは支障が出ると思い、鍵をかけたシーンを携帯電話の動画に撮るという事を思いつきました。通勤途中で気になってもそれを見直せば安心するかと思いました。

しかしそんな簡単なものではありませんでした。すると今度は仕事中や移動の時でもその動画が気になり、それを何回も確認しないと気が済まなくなりました。また仕事でもデータの数字や封をした内容物が大丈夫かと心配になり、何度もやり直してしまうようになりました。

そうして今度は家の中でも玄関やガス栓のみならず、窓の鍵がちゃんと閉まってなくて泥棒が入ってくるのではないか、水道がちゃんと閉まっていなくて水漏れして階下の人に迷惑がかかるのではないか、家電のプラグから火災になってしまうのではないかと怖い想像が頭に浮かび、確認行為もエスカレートしていきます。

朝に仕事で家を出るまでの確認にも手順が増えて、それを確認する順番なども決まっていき、それを途中で間違えたり、何か途中で気になる音(遠くでクラクションが聴こえる、メール着信があるなど)自分の「儀式」の邪魔をされると、それまでの確認がすべて取り消しになってしまい、また最初からやり直します。

そうして家を出るまでに1時間以上かかるようになってきます。もうここまでくると疲れ果てとても日常生活が送れる状態ではありません。私は外出もままならなくなり、仕事も辞めてしまいます。

こんな馬鹿馬鹿しい事に振り回される事、そしてそんな自分が本当に嫌いになり、さらに精神状態が不安定になりました。トイレも流した後に水が止まらないと気が済まないし、洗濯機を回している時も途中でホースが外れて水浸しになっていないかと頭に浮かびずっと確認してしまうなど、さらに確認事項が増えていきます。他の人からしてみると異様でくだらないと思われそうですが、わかっていても止められない本人が一番苦しいんです。

うつ病で通院していたのですが、確認行為のために外出するのも一苦労でした。しばらくは家から出られなくてクリニックに行く事もできなかったのですが、仕事を止めて家で何も考えず過ごしていたら、この時間までに職場に行かなくてはいけないと言うプレッシャーがなくなったからなのか、少しだけ落ち着いてきました。

まだ確認行為は続いていたのですが、何とかクリニックに行き事情を説明して強迫性障害のお薬を処方してもらいました。それを数ヶ月飲み続けた事と、仕事に行かなければならない負担がなくなったのか(金銭的な心配が出てきましたが)やや落ち着いてきたので、強迫性障害の本を読んでいろいろな事を知り、自分の馬鹿馬鹿しいと思っていた行為も症状なのだとしっかりと認識して、自分への自信を取り戻す事ができました。

症状が酷い時は確認に追われて疲れ余裕が無く、病気の事を調べようと言う気持ちも起きないし、自分の事が本当に恥ずかしくて嫌いで、とにかく辛かったです。

この強迫性障害についてもっと理解が深まればいいなと思っています。日常生活を送るのが大変ですし、自分でもおかしいなと思っても、こんな事言ったら絶対おかしいと思われると感じて言わない人がたくさんいるのではないでしょうか。

ま、たこういう性格だからと思い込んでいて、実は強迫性障害だと気付いていないのもあるかもしれません。本来ならば軽い症状の時に気付けば良いのですが、心の病気への「気持ちの問題」と言う考えがまだ根強いので言い出しづらく悪化してから通院する事になりかねません。

また認知行動療法などで治療計画を立ててくれる人や、職場などで本人の負担が和らぐような配慮があったりしたら良いのですが、うつ病などよりも多くないのでまだ理解が難しいのが現状です。

でもとても珍しい病気でもないので、言えないだけで本当はもっといるのかなと思っています。家族と住んでいる人の場合は、行為に巻き込んでトラブルになる事もあるようですし、強迫性障害をはじめ、精神疾患への正しい知識と理解がもっと必要だなと改めて感じました。


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